プラチナ素材のマリッジリングサイズ直し / リペア
時間を重ねた指に、再び寄り添うリングへ
ご相談をいただいたのは、結婚20年以上を迎えられたご夫婦からでした。
長い時間を共に過ごし、人生の節目も数えきれないほど乗り越えられてきたお二人。
ある日、ふと気づいたときにはマリッジリングが指に入らなくなってしまい、外すのもつけるのも難しい状態になっていたとお話くださいました。
お預かりしたリングはプラチナ素材のシンプルな結婚指輪。
毎日大切に身に着けてこられたその証として、柔らかな輝きとわずかな生活傷があり、そこに20年以上の思い出が宿っていました。
金属の中でもプラチナは特に強く、長い年月に寄り添うジュエリーにふさわしい素材です。
そのため、サイズ直しの際も、素材の特性を活かしながら丁寧に加工する必要がありました。
現在のサイズとご希望のサイズを確認し、指まわりの状態や着用感の希望なども細かくヒアリングしました。
「久しぶりにこの指輪をちゃんと着けたい」
お二人がそう話される姿から、結婚当初と変わらない深い絆を感じ、作業にも自然と気持ちが入ります。
プラチナのリングは、ほんの数ミリの調整であっても、一次的に金属を広げ、表面のゆがみを整え、輝きを戻すという工程を慎重に行います。
サイズを広げる際は、力任せに引き延ばさず、地金の流れを損なわないよう調整することが大切です。
ただ大きくするのではなく、指に優しく馴染み、永く使い続けられる形へ戻す。
リングが再び持ち主の指に収まった瞬間、お二人から喜びの表情がこぼれました。
ジュエリーは装飾品でありながら、人生の物語に寄り添う存在です。
結婚指輪ともなると、その重みはなおのこと。
サイズ直しをしたリングが再び日常の中で寄り添い、これからの歳月を一緒に刻んでいくと思うと、私にとっても特別な仕事になります。
内側の文字を消さないよう丁寧に拡張
記念の刻印を守りながら、ミリ単位の精密調整
結婚指輪のお直しで特に慎重になる部分が、内側に刻まれた文字です。
今回のリングにも記念日とイニシャルが刻まれており、その刻印を残したままサイズを変えたいというご希望でした。
長く身に着けてきたリングだからこそ、大切な誓いの証を守りたいというお気持ちはよくわかります。
サイズ調整の際、リングをカットして地金を足す方法で
刻印を一切傷つけないよう、専用工具を使用して丁寧に拡張する方法を取りました。
見た目ではわからないほど微細な作業ですが、ミリ単位で幅を調整しながら、歪みが出ないよう角度や圧力をコントロールします。
拡張後は磨き工程へ。
新品のようにピカピカにしすぎず、長年使ってきた風合いを少し残すか、完全に研磨するかもお選びいただけます。
今回は「これからの年月も一緒に艶を増していきたい」とのことで、自然な磨き仕上げでお返ししました。
お渡しの際、お二人が指輪を重ねて嬉しそうに眺めていた光景が、とても印象的でした。
サイズ直しはもちろん、
・結婚指輪の磨き直し
・変形直し
・宝石の留め直し
・表面加工の再仕上げ
など、長年のご愛用で気になる部分のメンテナンスも承っています。
「新品に戻す整形」ではなく、
時間とともに育ったジュエリーと、これからも歩んでいける状態に整える仕事
それが私の考えるリペアです。
大切な思い出が刻まれたリングを、安心してお預けいただけるよう今後も尽力してまいります。
私たちは日々、日本の歴史に触れ新しいものを発信してます。
古き良き和の文化・伝統をデザインした作品に興味がある方は一度当社のHPを覗いてみてください。